【続】翻訳コーディネーターが不思議に思った特許翻訳の世界
前回書いた記事「翻訳コーディネーターから見た特許翻訳の世界」の続きです。
続編の予定はなかったのですが、思いの外アクセスがあり、もう少し違う観点から書いてみることにしました。
翻訳コーディネーターだった私が、特許翻訳の世界で不思議に思ったこと、疑問に思ったことのまとめです。
翻訳会社が違うと事情もかなり違ってくると思いますので、その点は恐れ入りますが予めご了承ください。
翻訳者の能力より、お客様との相性の良し悪し?
私は海外の顧客とメールでやり取りできる程度の英語力はあるのですが、翻訳文(特許明細書)の良し悪しを判断できる程の英語力・専門知識はありません。
前回の記事では「優秀な翻訳者に仕事が集まるとは限らない」という見出しで書きましたが、優秀な翻訳者がどの顧客からも評価されるとは限りませんでした。
たとえばA社から「翻訳者Bを指名したい」と言われた時は「A社と翻訳者Bは相性がいい」と考えていましたし、C社から「次から翻訳者Dには頼まないでください」と言われたら、「C社と翻訳者Dは相性が悪い」と考えていました。
社内で評価の高い翻訳者が、お客様先からNGを受けたこともありました。
NGの理由を丁寧に説明してくださるお客様は多くありません。社内の翻訳者兼弁理士の先生が翻訳文をチェックしても、NGと言われた理由は分からずじまいの時もありました。
和訳を好む翻訳者・英訳を好む翻訳者
英訳の方が単価が高いので、英訳を中心にされている翻訳者の方は多かったです。
和訳中心にされている翻訳者の方も「ゆくゆくは英訳をしたい」と言われている方が多い印象でした。なかには、「英訳もできるけれど和訳がしたい」という翻訳者もいましたが。
英訳中心でやっている翻訳者の方には「英訳しか引き受けない方」「場合によっては和訳も引き受けてくださる方」「英訳・和訳気にせず引き受けてくださる方」と大きく3タイプいらっしゃいました。
トライアルを合格されたばかりだと、探りながら依頼していました。
特に機械分野やIT分野の翻訳者の方は英訳専門の方が多かったので、和訳依頼が来た時は頭を悩ましていました。
独立希望の翻訳者・社員希望の翻訳者
翻訳者という職業柄、ゆくゆくはフリーランスとして独立を考えている方ばかりなのかと思っていましたが、人によりけりでした。
顧客から引っ張りだこで、独立したら確実に収入が増えるのでは…?という翻訳者の方でも、正社員にこだわる方はいらっしゃいました。
その人の性格によると思いますが、過去に金銭的に困った経験がある方だとより慎重になっている印象を受けました。
もともとフリーランスだった方が、転職して企業勤めを始める、というパターンもありました。
在宅希望の翻訳者・出社希望の翻訳者
場所を問わず作業ができる仕事のため、やはり在宅を希望される方が多いです。
翻訳者だから在宅勤務をしているのか、在宅勤務をしたいから翻訳者になったのかも人によりそうです。
あまり多くはないのですが、出社にこだわる方もいらっしゃいました。
会社に来ても、誰とも話さずに黙々と作業をしているだけなのですが、家でずっと一人で作業するより、周りに誰かいた方が安心できるのでしょうか。
「家でも作業ができるけど、出社した方が捗るから」という理由で出社を選ばれている方もいました。通勤時間がかかっても、仕事と生活のON・OFFが調整でき、作業効率も上がるため会社での仕事を選ばれていました。
特許翻訳については、本記事で最後です。
ご覧くださり、ありがとうございました。
結衣子